正月の記事で「趣味に転換点が~」なんてカッコつけたこと書いてましたが、これは例の撮影チームとしてオサムシ、水昆、トビムシなどを担当させていただいた学研の図鑑の話。
まだ入手していない方、この記事を読む前に是非ご購入ください!
あんまり詳しい経緯を書くのも不粋かと思うのではしょりますが、簡単に言うと3年前?ぐらいにTwitterにアップしたオサムシ白バックまとめを丸山先生が見てくださっていて、スカウトしていただいた、という感じです
オサムシ白バックまとめver.2 pic.twitter.com/ZnxBq0xCdT
— ぷらなりあ@趣味垢 (@himeyokobai) 2019年12月5日
これも買えます!https://planaria-photo.booth.pm/items/1715247
始めはこの白バックまとめの写真をそのまま使う、という想定でしたがいろいろあって一新させていただくことになりました
オサムシを提供してくださった皆様、本当にありがとうございました!
撮り直していくにあたってこだわったのが体勢
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オサムシの見開きページをまるまる撮らせてもらえる、とのことで前々から意識はしていた虫の体勢を改めてこだわり尽くそう、と思いました
今回は学研の図鑑のオサムシ白バックでこだわった体勢の統一論について書いていきます
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まず前提としてオサムシ白バックはどのように撮っていたか
という感じ
旧セットとかいうやつはよくわからなくていいですが、要するに他の甲虫とは背景素材もレンズもディフューザーも違うセットで撮ってました
これはもし図鑑制作の期間中に撮れないものがあったらオサムシ白バックまとめ時代の写真を使うために質感が変わらないようにするため
白バックの背景素材として一世を風靡していたヤマザキのお皿は被写体の反射が出やすい、という理由で今回は他の昆虫にはほとんど使われませんでしたが、オサムシの白バックにはなかなか便利なのです。
その理由としては
といった感じです。
今回の図鑑のオサムシ白バックのほとんどが実は15枚ほどを手持ちで深度合成をしているため、いい体勢でしばらく止まっててもらうことが重要になってきます。
一瞬同じ体勢になるだけではダメ。
そのいい体勢を誘導できるのがヤマザキのお皿のカーブの部分。
止まるまでかなりの時間がかかるものもいますが、お皿に放置しておいて止まってるな~というタイミングで深度合成をする、というようにして撮影していました。
1枚に数時間かけて撮っている、といろんなところで言ったりしてますが、これは深度合成してるせいですね、単写ならすぐです
ちなみに被写体の反射の例の写真も被写体の反射のぐにゃっと感から皿のカーブに止まっているのがわかりますね
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ここから本題、体勢についてのこだわりポイント
こだわっている、とはずっと偉そうに言ってますが、すべての写真がこの理想に到達できているわけではありません。
図鑑掲載写真でも全然このポイントまもれてなくね?みたいなのいくつかありますがあんまり突っ込まないでください()
例として掲載写真での失敗点も書いていきますが、図鑑のネガキャンになるとして怒られたらすぐ消します
- 体を浮かせていて、頭をあげている。触角は前に出している
これは大前提。
白バック写真の重要なコンセプトである"生きてる感"は"歩いている感"から醸し出させるものだと考えています。
他の甲虫はだいたい歩いているところを撮影するようにしていますが、オサムシは深度合成をしたいという謎のこだわりをいれてしまったため実際に歩いているところを撮るわけにはいきません。
歩いているところを撮るわけにはいきませんが、"歩いている途中に止まった"感じのものは撮ることができます。
これを狙います
触角を後ろに下げている、頭があがっていない写真は正直〆てからでも撮れる感じになってしまうのであんまり好きじゃないですね
しかし、触角をシャキッと前に出していれば生きてる感が出るというのはあって、なかなか体を浮かせてくれないやつは妥協したことがあるというのも事実...。
こういうときは影を薄めに編集するとちょっと体浮かせてる感が出せます。
影わけ編集の記事参照。
触角が後ろに向いていたり頭を下に下げてしまっていたら、つんつんして歩かせればまたいつかいい体勢で止まってくれるときがきます。何時間かかるかはわかりませんが
触角の角度が悪いな~と思ったら、そぉーっとピンセットかなんかで寄せてあげれば前に向けてあげることができます。
図鑑掲載のヒメオサムシはもうちょい前に出してあげるべきだった。
- 前・後脚の角度
オサムシページをパッと見ていただくと、左上がり、30~40°ほどの斜めの線が見えるような印象を受けると思います。
これは手前の後脚の角度を意識して揃えたため。
オサムシは後脚が非常に長くて目立つため、これがあっちこっちに向いてしまっているとかなりバラバラの印象を受けてしまうのではないかな?と思い、手前の後脚はかなり徹底して揃えました。
前脚は姿勢の浮いている感に関わってきます。
奥の前脚を前に出しすぎているとべたっと体を落としている感じになってしまうのでここは80~100°ぐらいに曲げているのがちょうどいいのかな?と思っています
不思議なのが中脚。
ここは前に向いたり後ろに向いたり写真によってまちまちですが、体勢のバラバラ感は出ていません。
おそらく前脚後脚を結んだ線の×が統一されていればあまり気にしなくてよい、という感じだと思います。
図鑑掲載のセスジアカガネオサムシは奥の後脚フセツをもうちょい角度をつけるともっと体を浮かせてる感が出たはず。クロオサムシは奥の前脚フセツをもうちょい前に向けてあげるとバランスよく見えたはず。
ヤマザキのお皿はツルツルしているので、爪楊枝かなんかで爪をひっかけて動かす、というようにすれば静止しているオサムシを刺激せずに脚の角度は簡単に揃えることができます。参考までに。
- 60~80°の撮影角度
図鑑としての指定された撮影角度が60~80°ぐらい、とのことだったのでそれぐらいの角度で撮りました
これがなかなか難しく、オサムシ白バックまとめを見るとわかるように今まで45°ぐらいで撮ってきたという癖が深い角度での撮影を邪魔してきました
この癖を取っ払おうとなるべく上から、なるべく上から、と意識して撮っているとだんだんほぼ真上、ぐらいの角度になってきてしまいました。
迷走はしましたがだんだんちょうどいい角度で撮れるようになってきたと思います。
裏技として、GIMPの遠近法ツールを使うと若干角度感を変えられます。掲載写真でもいくつかいじってると思います()
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大きく3つポイントを書いてきました。
体勢は虫次第だろ、と思っていた時期もありましたが、結論いい体勢は作れます。
爪楊枝やピンセットで脚や触角を揃えてもらえばいいし、同じ体勢になるまで何カットも撮ればいい。
同じ体勢で撮った白バックを並べたときはなんとも言えない気持ちよさがあります。
皆さんも是非好きな分類群を同じ体勢で撮り集めて並べていきましょう!
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後日談?というか余談ですが、母親が友人に図鑑をプレゼントして、オサムシページを紹介したら、「標本を整形して撮ってるんじゃないの?生きてるのをこんなに揃えて撮れるなんてあり得ない!」と言われたそうです
めちゃくちゃ嬉しいけど冷静に考えたら"生きた"というコンセプトを失っているのでは...?
次なる目標は”躍動感”
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定期的にオサムシ白バック新作もツイートしていきたいですね
オサムシ編、として今回は書いたけど次は何編がいいだろう?
アリかハマトビムシかな、どうせ書くの半年後とかになるけど